そろそろ「作り方」エントリを書き直さなきゃと思うのですが、過去にご紹介したもの(ver.2)と現行型(ver.4h.2)とを比べると、制作の上での手軽さと言う点では過去のモノの方が優れていたりして、リライトの機会を逃している昨今です。
と言うわけで、ご参考までに「折り畳み式Pヘッドにありがちな問題」の話なんかを共有できれば、と。
皆さんのノウハウや、失敗事例なんかも伺ってみたいのだぜ。
最初に、なぜ「折り畳み式」なのか
そもそもの話として、「折り畳み式」は最適解ではありません。
見栄えの良さを追求するにしても、軽量性や快適性を追求するにしても、折り畳まない(変形・着脱部の無い)固定された形で作った方が、単純であり、簡単であり、容易であり、合理的です。
もしも貴方が「折り畳む必要性」に迫られていないのであれば、「折り畳み式」にするべきではありません。
ですが、実際には、固定式を運用する事が困難な、「折り畳む必要性」に迫られているPヘッダーは少なくないのではないでしょうか。
「折り畳む必要性」とは、主に以下の2点が考えられます。
- 公共交通機関等を利用して移動する際、荷物として嵩張らない事
- 使用時以外に、コインロッカーやライブ会場の椅子の下に収まる事
例えば、車で来場して会場近辺に駐車場を確保したPヘッダーであれば、この様な事は考える必要はありません。
実際その様な方もおられますが、大多数のPヘッダーは電車等を利用して来場されるのでは無いかと思います。
「折り畳み式」の欠点・課題
前述の繰り返しになりますが、一般的に「折り畳み式」よりも固定式の方が優れている部分・有利な部分があり、それは裏を返せば「折り畳み式」の欠点と言う事になります。
即ち、
- (固定式と較べて)強度が落ちる
- (固定式と較べて)見栄えが悪くなる
主にこの二点の克服が、「折り畳み式」において取り組むべき課題となります。
どうやって「折り畳む」か
例として、折り畳み構造の模式図を右に挙げます。
Pヘッドは大まかに言えば「開口部を下に向けて伏せた箱」として表現できます。
前後左右上下の6面のパネルが接続された「蓋の閉じた箱」においては、パネルは相互に固定されており、畳む事はできません。
しかし、上下の2面を外せば、前後左右の4面は繋がったままで畳む事が出来ます。
右の図は、畳む事を阻害する上下のパネルを排除した状態を、上から覗き込んでいると考えてください。
パターン 1
先程の図の一番上に示したのが、私が作った中では最初のPヘッドの構造です。(第一世代)
構成素材はプラダン(ダンプラ、プラベニ)、ポリプロピレン(PP)製の2層中空4mm厚のパネルで、赤色で示した角、隣り合うパネルを繋ぐ部分は、2層の片方のみ(折り曲げる山折りの側)を切る事で折り曲げられるようにしています。
分かり易い欠点としては、折り畳んだ状態での長さが「折り畳む前の長辺+短辺」の長さになってしまうと言う事と、折り曲げ部分に「折り癖」が付いてしまい、組み立て状態に戻しても直方体にならない(上から見た時に若干「菱形」に崩れがちになる)と言う事でしょうか。
この時は、その大きさ故に「キャンバスバッグ」にて持ち運んでいました。
パターン 2
第一世代は通常サイズのコインロッカーに入れるのもギリギリだったため、もう少しコンパクトに畳んで余裕を持った取り回しをしたい、と作成したのが第二世代。図の二番目の構造です。
フロントパネル、バックパネルを折り曲げる事で、折り畳み時の大きさを抑えました。
どのパネルをどのように折り曲げるか、と言うのは見栄えと相談するところで、Pヘッドにおいて一番面積の大きい(即ち、収納時に邪魔になる)パネルは他ならぬサイドパネルなわけですが、ここに「折り跡」「折り癖」が付いてしまう事はどうしても避けたかったため、比較的「見栄えの重要度」が低いフロントパネルとバックパネルを折り曲げる形にしました。
折り畳んだ状態での長さを抑えた代わりに、厚みが増しています。
また、「折り癖」自体は解決していませんので、組み立て状態において「折り癖」に沿って内側へ潰れようとするパネルを固定する仕組みが必要になりました。
尚、この時は「バックパネルのみ分解」「フロントパネルとバックパネルを分解(=完全分解式)」等も並行して試していましたが、強度面などの事情でそれぞれ一度しか使用していません。
パターン 3
現行型でもある第四世代が、図の下の構造となります。
(尚、第三世代は前述の「分解式」として、強度不足により実戦投入→即退役となってしまいました。)
「パターン 2」との違いは、フロントパネル、バックパネルを軟質素材(シート:右図の青色の部分)と硬質素材(ボード)の二層構造にした事。
折り畳み時は内側のボードを抜き取る事により、柔軟なシートで繋がった2枚のサイドパネルを重ねて収納する事が出来ます。
この構造は「折り癖」に起因する「組み立て状態での望ましくない変形」の問題を解決しています。
両サイドパネルは「柔軟だが延び縮みはしないシート」で繋がっているため、外側へ膨らむ事は無く、また、
硬質のボードが骨組みとなって支えているため、内側へと潰れる事もありません。
尚、このままの状態ではフロントパネル、バックパネルの表面素材(右図にて青色で示したシート)とサイドパネルの素材が異なる事により、見栄えにおいて素材感が統一されないと言う問題がありますが、これはサイドパネル表面にも同じシートを張り付ける事により解決しました。
現行型(version 4h.2)のご紹介
頭頂部からアール部分を構成するトップパネルを引き剥がして、フロントパネルとバックパネルの内側のボードを引き抜いて、サイドパネルを重ねると、シンデレラガールズ1stライブ物販のトートバッグに収まります。
なかなかコンパクトでしょう?
構造が分かり易いよう、普段は外していないフロントパネルの外側のシートを剥がしてみました。
このフロントのシートやトップパネルはシリコンゴムの粘着テープによって貼り付けています。
シリコンゴムの粘着テープは「表面が汚れると粘着力が失われるが、水で洗い流すと何度でも粘着力が回復する」…と言う事になっているのですが、最近、洗っても粘着力が以前ほどは得られない状況になっており、対応策を検討中。貼り換えられるかな?
更に、ボードも引っこ抜いてみます。
ここで手前に立てているのが、組み立て時にはフロントパネルとバックパネルの内側に挿しこまれるボード。
フロントパネルのボードは上下二枚に分割されており、それぞれ上と下から挿入します。
バックパネルのボードは1枚で、上から挿入します。
フロントパネルのボードを分割したのは理由があって、ヘッドを被った状態で下のボードを抜き取って、シートを下から巻き上げる事により、被ったまま飲食ができるようになっています。便利!(?)
この仕様は第二世代から続く「こだわり」だったりします。くっだらないけど、
素材は色々と試行錯誤しましたが、現行型は、5mm厚のスチレンボード(発泡スチロールボード)と0.2mm厚の塩化ビニールシートの組み合わせです。
水洗い前提なので、スチレンボードは両面とも紙貼りではありません。
塩化ビニールシートは思ったよりも透過性があったため、黒ないし白のシートを内側に重ねています。
もうちょっと「プラスチックっぽい質感」のシートがあるといいんだけどなぁ。
屋外で使うモノなので、耐久性、非汚染性なども求められますが、塗装の手間を省く都合、売り場にある物の中からまず色で絞り込んでいるので、選択肢はあまり多くないです。
トップパネル固定用のタブや、ボードの柔軟性を持たせたい箇所にポリエチレンフォーム(発泡ポリエチレンボード)を使用しています。
製品名としては、コーヨーソフトボード(光洋産業株式会社)とサンペルカ(三和化工株式会社)です。
その他の可能性について
先程からちょこちょこ言及していますが、「折り畳み式」の他に、「完全分解式」もまた一つの答えです。
実際にその様なPヘッドを運用されている方は複数おられますし、私も何度か試しています。
分解式のメリットとしては、収納時に(折り畳み式以上に)コンパクトになる事や、破損時もダメになったパーツのみ作り直せば済むので長期運用の上で手間と材料コストを省ける事、パーツ単位での改良・交換が行える事などがありますが、一方でデメリットとして、パーツ接続部分の強度や精度の問題、そして、組み立てに手間と時間がかかる事などが挙がります。
特に、組み立ての手間と接続強度はトレードオフの関係になる場合が多いのではないでしょうか。
組み立てを簡略化すると、接続強度が下がり分解し易くなる。接続強度を上げれば上げるほど、組み立てが煩雑になりセットアップに時間がかかる。
組み立てに要する時間は可能な限り短縮したいところですが、幕張メッセやパシフィコ横浜などの海沿いの現場は風も強く、接続強度を軽んじる事もできません。
パーツ自体の自重も接続強度を左右しますし、実際に作って運用してみると、事前の考えよりも難しいバランスで成立している事を思い知らされます。
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